| English | Japanese |
研究の背景
集合知研究は, 古くは市民社会や国家における叡智の形成, 昆虫や細菌などの生命体の集団的な振る舞いなどを対象に行われてきました.
最近では, インターネットとWebの普及が大きな影響を与え, Wikipediaに代表される知識の集積活動が集合知と呼ばれ始めています.
こうした研究活動は, 「人」の協力により「知識」を集積し, 集合知を形成しようとするものです.
しかしこれまでは, 百科事典の作成や大統領選の予想など, 関連情報へのアクセスが容易で, 個人の意見形成がしやすいテーマが対象でした.
関連情報の権利関係が複雑で, 個人の意見形成が他人の判断に依存するテーマを扱おうとすれば単純な集計は不可能で, 計算機科学からの貢献が必要不可欠です.
一方, 計算機科学では, 主として集合的意思決定の計算モデルが研究されてきました.
この分野は「自律エージェントとマルチエージェントシステム(autonomous agents and multiagent systems)」と呼ばれ, 1980年頃から研究が開始され, 今日では人工知能最大の研究グループに成長しています.
意思決定主体をエージェントと呼び, それらの協力, 競争, 交渉, 調整, 組織化などの計算モデルが研究されてきました.
人々の組織は, 共通の目標を持つ「チーム」, 個々に目標を追及する「市場」, 関心を共有する「コミュニティ」に分類することができます.
これまでは, チームと市場に関する様々な合理的(あるいは限定合理的)な計算モデルが研究されてきました.
これらの計算モデルは, 協調問題解決やオークションなどコンピュータによる自動化が容易な領域を扱っています.
しかし, 集合知形成においては, コミュニティに見られる人間的な側面を無視できません.
部分的な自動化が可能で, 人とエージェントが相互に学習しあうことのできる参加型システムが必要です.
下図に今日までのエージェント研究の進展を示します.
![]() 図 : エージェント研究の進展
また, 集合的知識構築のための基盤技術とも言うべきセマンティックWebの研究が2001年から始まっています.
人にしか意味を理解できないWeb情報を, コンピュータ(エージェント)可読にする試みです.
記述論理に基づくオントロジー記述言語OWLが2004年にW3Cで標準化されています.
しかしながら, 実際の利用現場では, 論理的一貫性を満たすオントロジーの構築は容易ではありません.
私たちが注目するのは, むしろその後, 広がり始めたWebサービスです.
これを用いれば, 個々の知識をサービス化し, サービスの連携により縦横無尽に知識を組み合わせることができます.
論理的推論を支える意味の体系化は容易ではありませんが, 提供するサービスを体系化することは考えやすいです.
サービス指向の知識の体系化によって, 人間社会やエージェントが操作可能な集合知を, 利用現場から形成していくことができます.
こうした研究の流れの先にあるものは, 「人」「エージェント」「知識」をサービスによって統合する集合知の形成です. 研究の目標
研究室の目標は, 多くの人手により知識を集積する現在の集合知形成パラダイムを, 「人」「エージェント」「知識」を構成要素とし, それらのサービス連携により集合知を形成するパラダイムに転換することです.
そこでは, 社会とマルチエージェントシステムは相互に学習する相補的な関係となります.
各人の意思決定過程のモデリングにより各々のエージェントを形成し, その集合体のシミュレーションにより集合知形成を予測します.
知識はその記述的意味論によるのではなく, サービスの操作的意味論に基づき体系化されます.
人もエージェントも知識もサービスとして位置づけることにより, 「人」「エージェント」「知識」を統合する参加型技術の開発が可能となります.
下図に研究の目標を示します.
![]() 図 : 研究の目標 References
|