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応用例
Qは同時に進行中の, 複数の異なるプロジェクトの要求を満たす形で設計された. FreeWalkでは, 3D仮想空間中をC++で記述されたアバターやエージェントが歩行動作する. 各々のエージェントは自律的に行動し, 対話をこなす. 社会心理学実験や避難シミュレーションなどに用いるため, シナリオを調整しながら繰り返しエージェントシステムを動作させる必要が生じる. Venus&Marsでは, Javaで記述された複数のエージェントが, ユーザと対話しながらWEBの情報検索を進める. これらの応用で, 共にエージェントの動作シナリオを記述する言語が必要となった. QはFreeWalkとVenus&Marsという異なる2つの先進的 応用研究のニーズに基づいて設計された. このことがQの開発を先端的でかつ現実的なものとしている. 全く異なる応用システムがQを共有できるのは, Qがエージェントの内部を記述するためのものでなく, ユーザの視点からエージェントにタスクを依頼をするための言語だからである.以下でQの応用例を詳しく述べる.
マルチエージェント情報検索
WEB検索支援システムVenus&Mars (イメージ情報科学研究所)は複数のエージェントが独立にWEBの検索を行い, 協調してユーザのニーズを満足させる枠組みである. 通常の方式であれば, 例えば, システム内に黒板を設け, 各エージェントの検索結果を黒板上で調整する. しかし, 検索エージェント群が独立に開発されたものである場合には, 調整結果は必ずしも満足なものとならない場合が多く, システム全体に対するユーザの信頼は得られにくい . Venus&Mars は検索エージェントの調整過程を複数のキャラクタの対話としてユーザに見せてしまうというユニークな発想に基づいたシステムである. エージェント間の協調過程をユーザが観察でき, さらにその過程に参加できれば, システム全体への信頼感が増すと考えたのである. 例えば図1では, 画面上に3エージェントが登場し, 連携することでWEB検索を実現している.

現在の実装では, 各検索エージェントに対応したサーバが用意されている. そのサーバ上に, それぞれQメッセンジャーが用意され与えられたQシナリオを実行する. また, 実行途中での他のエージェントへの情報伝達はコミュニケーションサーバを介して実現される. Venus&Marsにおけるエージェントの対話例を以下に示す .
ユーザ:「風邪に効く料理を教えて下さい.」と入力.
対話エージェント:「それでは皆さんお願いします」
(「風邪に効く料理」をWEB検索エージェントに伝達.)
WEB検索エージェント: よく分からない表情.
(「風邪に効く料理」を要求分析エージェントへ伝達.)
要求分析エージェント: (「風邪」でデータベースを
検索し,関連キーワード「白菜」を取得)
要求分析エージェント: 「風邪に効くのは白菜料理じゃ.」
(「白菜料理」をWEB検索エージェントに伝達)
WEB検索エージェント:納得した表情.
(「白菜料理」で料理を検索)
WEB検索エージェント:「こんなのでましたよ.」
(検索結果のWEBページを表示)
このように, Venus&Marsでは異なる複数のエージェントが連携することにより, 協調型の情報検索を実現している.
3次元仮想空間での避難シミュレーション
図2は, デジタルシティプロジェクト(科学技術振興事業団)の仮想空間システムFreeWalkでの避難シミュレーションを示している. この仮想空間内では多数のエージェントがシナリオに基づき行動する. 実証実験のシナリオは例えば以下のとおりである.
200X年, 京都の3次元仮想都市で, 京都駅, 地下鉄での災害を想定した避難訓練が実施され, インターネット経由で市民多数が参加する.
200Y年, 京都で地震が発生. 火災が地下鉄, 京都駅構内で発生する . 物理空間での状況はセンサから無線ネットワークを通じて刻々センターに送られる. センターでは人々の群れとしての行動が把握されパネルに表示される. さらに仮想都市での避難訓練の結果を利用して, 適切な指示がモバイル端末に送られ, エージェントによる誘導が行われる.

実証実験の第一段階では, インターネットから参加する100人のアバターと, 1000体のエージェントを仮想京都駅で動作させ, 避難シミュレーションを実施する. この段階は仮想空間に閉じているため, エージェント群の制御は, 1個のQメッセンジャーで実現することができる.
しかし, 第二段階になると, モバイル端末を含め, エージェント群は分散して配置されることになり, その間の通信帯域も多様となる . そうした環境で効率よくシナリオを記述し実行することは今後の課題である.
エージェントの社会心理学実験
図3は, 社会心理学実験を行った際のFreeWalkのスクリーンを示し ている. 犬の形をしたエージェントが人間の対話を支援する. こうしたエージェントの性質を調べるための社会心理学実験では, コンピュータの非専門家(例えば社会心理学者)が, 様々に設定を変え て繰り返し実験を行うことが必要となる.

図3:エージェントを用いた社会心理学実験
我々は現在, Stanford大学の社会心理学コース(複数の学生グルー プがそれぞれ実験を計画し実施する)にFreeWalkとQを提供する計 画を進めている. シナリオ記述が, エージェントの開発者と利用者のインタフェースとなる典型的な例と考えている




