異文化コラボレーション

概要

社会のグローバル化に伴い,文化や言語が異なる人たちが共同で作業を行うことが多くなってきました.石田研究室の異文化コラボレーションプロジェクトでは,ヒューマンインタフェース技術を用いて,文化間の障壁を超えるためのツールを提供することを目指しています.本研究プロジェクトでは,文化と言語間の障壁を超えるためのコミュニケーション分析に関する基礎研究を行っています.また,異文化コラボレーション現場を支援するためのコミュニケーションツールについて研究を進めています.実際に,国際的に活動している非営利団体(NPO)と共同で,研究成果を社会に展開しています.例えば,ベトナム農業支援や世界の子ども達が集まるワークショップでの多言語コミュニケーション支援を行っています.

本研究プロジェクトの研究成果はヒューマンインタフェースのトップカンファレンスであるCSCWやCHI,IUIに多数採択されています.ACMの異文化コラボレーション国際会議(ACM CABS)も我々が発足したものです.

研究内容

コミュニケーション分析

コミュニケーション分析の基礎研究として,異文化の相互理解における非対称性の研究と非母語話者のコミュニケーション問題分析の研究を進めています.

異文化話者同士で意思疎通を行うには,言語の違いだけでなく文化的背景の違いを考慮したコミュニケーション手段が必要です.しかし,ある文化圏に属する話者と別の文化圏に属する話者において,お互いの言語や文化に対する理解度には非対称性が存在することがわかっています.我々はこの非対称性(Cultural Asymmetry)に着目し,これを明らかにすることで,異文化コラボレーションの支援ツールを改善することを目指します.また,アイトラッキングなどの技術を用いて,非母語話者のコミュニケーションにおける問題を分析することで,コミュニケーション支援ツールのデザインに関する知見を抽出します.

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(図:言語の非対称性を考慮した多言語コミュニケーション)

子どもの多言語コミュニケーション支援

異文化コラボレーションのフィールドの一つとして,子どものコミュニケーション支援をターゲットとして研究を進めています.

毎年8月に京都で開催されている「児童のための京都異文化サマースクールKISSY(Kyoto Intercultural Summer School for Youth)」というイベントでは,世界の子ども達が京都に集まって協働で作品製作をします.その際に,子ども達は多言語対応されたWebチャットを用いてコミュニケーションします.このチャット上の子どもの振る舞いをモデル化し,その相互作用を観察することで,子どものコミュニケーションにおける問題の特定や解決策の提案などに役立てます.現在は,子どものモデル化にエスノグラフィという文化人類学における質的なデータを扱うための手法を用いて実際の子供達のコミュニケーションを観察し,モデルの作成とその評価を試みています.

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(図:児童のための京都異文化サマースクールKISSYの活動様子)

ベトナム農業支援における多言語知識コミュニケーション支援

途上国支援などで専門家が現地就業者に技術情報を伝える場合は,専門家が現地に赴き,対面で現地就業者に伝える,という方法が一般的です.しかしながら現地就業者が非識字者であることも多く,伝えた専門知識を将来に向けてそのコミュニティに蓄積させたり,近隣に拡散させたりすることが困難です.一方,近年では世界的に教育制度が向上していることもあり,途上国の郊外でも児童の就学率が向上し識字率も高くなってきています.そこで,重要で専門的な知識を,ICTを使って国内外の専門家からオンラインで児童を介して非識字の保護者に届けるYouth-Mediated Communication(YMC)と呼ばれる新しい途上国支援モデルが,特定非営利活動法人パンゲアによって提唱されました.

本研究は,YMCモデルを用いて,ベトナムのメコンデルタ地帯の農村地区の農家を対象に,日本人専門家によるタイムリーな肥料・農薬の散布などのアドバイスを行う際のコミュニケーションを支援します.我々は2011年から2014年の間に,ベトナムVinh Long省で4回の実証実験を延べ16ヶ月かけて実施しました.このような現場のサービスデザインの知見に基づき,多言語知識コミュニケーション設計の一般化を目標とします.

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(図:ベトナム農業支援の参加者の集合写真)

主な研究成果

[Journal]
  1. Chunqi Shi, Toru Ishida, and Donghui Lin. Translation Agent: A New Metaphor for Machine Translation. New Generation Computing, Vol.32, No.5, pp.163-186, 2014.
  2. Yue Suo, Naoki Miyata, Hiroki Morikawa, Toru Ishida and Yuanchun Shi. Open Smart Classroom: Extensible and Scalable Learning System in Smart Space using Web Service Technology. IEEE Transactions on Knowledge and Data Engineering, Vol.21, No.6, IEEE, pp. 814-828, 2009.
[Chapter in Book]
  1. Toru Ishida, Donghui Lin, Masayuki Otani, Shigeo Matsubara, Yohei Murakami, Reiko Hishiyama, Yuu Nakajima, Toshiyuki Takasaki, and Yumiko Mori. Field-Oriented Service Design: A Multiagent Approach. Takashi Maeno, et.al.(Eds.), Serviceology for Designing the Future, Springer, 2016.
  2. Donghui Lin and Toru Ishida. User-Centered Service Design for Multi-Language Knowledge Communication. Masaaki Mochimaru, Kanji Ueda, and Takeshi Takenaka (Eds.), Serviceology for Services. Springer, pp. 309-317, 2014.
[Conference]
  1. Naomi Yamashita, Andy Echenique, Toru Ishida and Ari Hautasaari. Lost in Transmittance: How Transmission Lag Enhances and Deteriorates Multilingual Collaboration. International Conference on Computer Supported Cooperative Work (CSCW2013), pp. 923-934, San Antonio, USA, 2013.
  2. Chunqi Shi, Donghui Lin, and Toru Ishida. Agent Metaphor for Machine Translation Mediated Communication. In Proceedings 18thInternational Conference on Intelligent User Interfaces (IUI2013), Santa Monica, USA, 2013.
  3. Ari Hautasaari. “Could Someone Please Translate This?” – Activity Analysis of Wikipedia Article Translation by Non-Experts. International Conference on Computer Supported Cooperative Work (CSCW2013), pp. 945-954, San Antonio, USA, 2013.
  4. Naomi Yamashita, Rieko Inaba, Hideaki Kuzuoka and Toru Ishida. Difficulties in Establishing Common Ground in Multiparty Groups using Machine Translation. In Proceedings of International Conference on Human Factors in Computing Systems (CHI2009), ACM, pp. 679-688, Boston, USA, April 6th, 2009.
  5. Daisuke Morita, Toru Ishida. Collaborative Translation by Monolinguals with Machine Translators. International Conference on Intelligent User Interfaces (IUI2009) pp.361-366 2009.
  6. Naomi Yamashita and Toru Ishida. Effects of Machine Translation on Collaborative Work. International Conference on Computer Supported Cooperative Work (CSCW2006), pp.515-523, 2006.
  7. Naomi Yamashita and Toru Ishida. Automatic Prediction of Misconceptions in Multilingual Computer-Mediated Communication. International Conference on Intelligent User Interfaces (IUI2006), pp.62-69, 2006.